月曜日, 3月 23, 2009

闇を裂く道


 少し前に、木本正次氏の「東への鉄路」という本の話をアップしましたが、今回は吉村昭氏の「闇を裂く道」を紹介します。
 「東への鉄路」に感動して、同じ木本作品ということで「黒部の太陽」を読み、同時に黒部繋がりで吉村氏の「高熱隧道」と同じ鉄道繋がりで東海道線丹那トンネルを扱った「闇の裂く道」へと手を出してきました。
 で、この「闇を裂く道」ですが、想像を絶する丹那トンネルの難工事を事実調査を積み上げて見事に描ききっています。「高熱隧道」は実際にあった黒部第三発電所へつづくトンネル工事という事実をベースにはしてはいるが、登場人物はすべて架空で、基本的にフィクションとしての文学作品だったのですが、「闇を裂く道」は登場人物はすべて実在で、実際にあったことだけを積み上げて作られている記録小説になっています。そういう意味では作者は違うが「東への鉄路」の方が近い作品に思えます。
 「闇を裂く道」はトンネル事故の救出劇やトンネルの上で暮らしていて水不足になった農民たちの苦闘など、見せ場がたくさんあるのですが、私が秀逸だと思ったのは、第1章と最終章です。第1章では丹那トンネル工事以前の箱根越えと呼ばれた御殿場線の急勾配や小田原と熱海をつなぐ軽便鉄道の貧弱さ、トンネルの上に広がる水が豊かな田園地帯などが描かれていて、丹那トンネルの必要性やのちの難工事への数々の伏線が見事に用意されています。
 最終章では丹那トンネル開通後、戦争と敗戦の中で弾丸列車計画と新丹那トンネルの挫折が描かれ、そして国鉄総裁十河の手による新幹線計画の実行と新丹那トンネル建設の話へと繋がり、そして新幹線が開業して一番列車が新丹那トンネルへと猛スピードで吸い込まれていくシーンで終わります。
 私はちょうど"Bullet Trains"を仕上げている最中にこの本を読み始め、リリースした直後に最終章を読み始めたもので、私のゲームのルールブックの序文と同じく東海道新幹線開業日で話を締めていたのに非常に驚き、感動しましたよ。
 みなさん、是非ともこの本を読んでください。そうすれば"Bullet Trains"をやりたくなると思いますよ。

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