水曜日, 2月 20, 2008

Blu-Rayの勝利


とうとう東芝がHD DVDからの撤退を発表して、ようやく次世代DVDの決着がついた。
私がここでBlu-Rayが勝つだろうと書いたのが2005年10月だったから、既に2年以上も立っているが、まさかこんなに長引くとは思わなかった。
2005年の後半にBlu-Ray陣営がコンテンツホルダーの切り崩しに成功してほぼ決着がついたように見えていたが、HD DVD陣営がmanaged copyの導入を掲げてメディアサーバーの実現にかけたHPやMSがHD DVDの支持に回ってから、コンテンツホルダー対PC陣営という構図に変わってしまい、おかげで長引いた気がする。
HD DVDの敗北で痛手を負ったPC陣営はおそらく次はネット配信でBlu-Ray陣営に挑んでくるだろう。Blu-Rayの勝利はつかの間にすぎず、本当の戦いはこれからなのかもしれない。

火曜日, 2月 05, 2008

連発する大型M&Aへの懸念


少し前から、ソフト業界の大型M&Aが急に増え始め、業界の寡占化が進行しているような気がして懸念を持っている。背景には業界の対立軸がMS対反MS陣営という枠から離れ、プロプリエンタリ対オープンソースという枠と、google対反google陣営という枠に既に変わってしまったということあると私は思っている。
前者の例は二つある。ORACLEによるBEAの買収とSunによるMySQLの買収だ。
Oracleは商用DBの大手であり、Sunは商用OSの大手で、この両社は反MS陣営の中心的な企業であり、相互に保管しあった盟友だったはずだ。
だが、OracleはJavaAPサーバー市場の3強の一角WebLogicを擁するBEAを買収し、SunはオープンソースDBでNo.1のMySQLを手に入れた。これはお互いの本業に乗り込んでの直接対決が始まったことを意味するのではないのか。
いわゆる基幹業務分野ではIBMがハード、OS、DB、APサーバーをそろえ、自前のソフトにオープンソースを組み合わせて垂直統合での強さを見せつけていた。IBMにとって、残るはERPだけとなっている。対するOracleはDBとERPに加えAPサーバーも手に入れて、プロプリエンタリのソフトで垂直統合をめざしている。Sunはハード、OS、APサーバーに加えDBも手に入れて、こちらは自前のソフトをすべてソース公開してオープンソース化した垂直統合で資金力での不利を埋めようとしているようにみえる。
次の焦点はOracleに足りないハードとOSを持っているHPの動きと、IBMに足りないERPのR/3を擁するSAPだと思える。またオープンソース化を進めるSunの次の一手も気になる。ERPの分野にオープンソースの強力なソフトは今は見当たらないが、これをSunとIBMが必要としている気がする。IBMの戦略は自前のソフトが強力な場合にはその分野はそのままで進めるが、その分野で不利な場合オープンソースで無力化を狙っているように見えるからだ。
ここまで長く書いてきたが、なぜミドルウエア市場で急速に垂直統合が進み始めているのかというのが私にとっての最大の疑問だったのだが、この疑問への解答が別のところから急に降ってわいてきた。私にとってそれがMicrosoftによるYahoo!への買収提案だった。なぜこれが解答なのか?
私が思うに、本来ならばMSのYahoo!買収などあり得ない話だ。Yahoo!でWindowsサーバーが動いているとは到底思えない。もしMSがYahoo!を買収し、システムを全部Windowsに変えたら、Yahoo!の基盤をすべて失うことを意味し、これはYahoo!の死を意味する。つまりMSがYahoo!を生かすためには非Windows環境でのWebサービスにMSNを統合することを意味するはずだ。だがこれはよほどのことがない限りありえないはずだった。
だが、現実にはありえないことが起きようとしている。つまりよほどのことが起きたのだ。ここでいるよほどのこととは、2つある。一つはおそらくMSがすでに大規模システムのサーバー市場で敗北することが決定的だということではないのか。先ほど述べたミドルウエア市場でのプレイヤーたちにとって、MSの製品がまったく絡んできていない。かれらはJavaを前提としているがWindowsなど前提としていないのだ。そこには.netの入る余地もない。
もう一つはGoogleの一人勝ちの問題だ。Googleは既にPC向けのWebサービスでは勝利を収めつつあり、モバイルの分野でもアンドロイドを投入して勝利を目指している。モバイルでは先行するシンビアンとの対決が待っており、シンビアンのバックにいるノキアがこれに肩入れする必要から、モバイル向けGUIのQtopiaを持つトロールテックを買収している。MSがYahoo!を買収する理由なんて対Google以外に理由があるわけがない。
そろそろ、この長い話の結論を書こう。MSがミドルウェア市場への影響を失い、Webサービス分野でgoogleが一人勝ちしつつある状況となったため、今までのMS対反MSという図式が崩れたのが今回の一連の動きの背景だ。
 ミドルウエアの分野ではIBMとSunがオープンソースの利用で商用ソフトの巨人たちに戦いを挑んでおり、Oracleは買収攻勢で商用ソフトをそろえ垂直統合への道を走っている。
 Webサービスの分野ではgoogle対反googleの戦いが始まっており、お互いに買収攻勢で激しく戦っている。
 この状態が続くなら、更なる大型買収が続くだろう。プレイヤーはgoogle、MS、IBM、Oracle、Sun、SAPに加え、RedHat、ノベル、HP、ノキア、Amazon、eBayあたりだろうか。この中で5年後に残っているのは何社あるのだろうか。既にソフトウエアの分野も無数のベンチャー企業がしのぎを削る時代は終わり、寡占化の時代に突入しているように感じる。これは私にとって非常に寂しいことである。